パート・アルバイトを正社員化して57万円の助成金をもらう方法

はじめに

タイトルスライド

この記事では、パートやアルバイトなどの有期雇用契約社員を正社員にして、1人につき57万円の助成金をもらう方法について解説しています。

パートやアルバイトから正社員にすることは、割とよくあることだと思います。

でも、助成金のことを知らずに、ただ単に正社員にするのと、助成金のことを知ったうえで、国からお金をもらいながら正社員にするのでは、大きな差が出ます。

1人57万円もらえれば、ボーナス1回分くらいにはなりますからね。それで従業員が頑張ってくれて、会社の業績アップにつながれば、みんなハッピーですよね。

ぜひ、この正社員転換の助成金について学んで、活用していきましょう。

この記事で学べることは次の2つになります。

・正社員転換の助成金がもらえる要件について。

・正社員転換の助成金を申請する方法について。

従業員を雇っている経営者、もしくはこれから雇う予定の経営者の方に読んでいただければと思います。事前に必要なことは特にありません。

どんな方法かスライド

さて、今回説明する助成金についてです。

パート・アルバイトなどの有期雇用契約の人を、正社員に転換すると、1人につき57万円もらえるという、国の助成金です。

1年度につき、最大20人まで申請できることになっています。

この助成金は、キャリアアップ助成金という名前で、非正規雇用の人の処遇アップに対して出る助成金のうちのひとつになります。

マイナーチェンジを繰り返しながら、もう5年以上続いている、歴史のある助成金ですね。

助成金は流行り廃りがあって、毎年新しくできたり、なくなったりすることが多いんですけど、この正社員転換の助成金は多くの会社が活用して、長く続いてますね。

まぁ、有期雇用とか、パートとか、派遣とか、いわゆる非正規雇用という人たちが、正社員に比べて賃金が低い、クビを切られやすい、ということで、

少しでも多くの人が正社員になれるように、助成金ができたわけですね。

国の施策としてやってることですから、もうしばらくは続いていくんじゃないかと思います。

ただし、上記の説明の通り、助成金は突然無くなることもあります。

無くなった後に、あのとき申請しておけば良かったと後悔しないように、しっかり知識をつけていただければと思います。

なぜ助成金を活用するのかスライド

さて、なぜこの正社員転換の助成金を活用したほうが良いのか、についてです。

今は、人材不足の世の中ですよね。

新しい人がなかなか採用できないということもあるでしょうし、今雇っている人が辞めてしまうことも問題です。

そんな場合に、正社員として処遇アップするということは、人材確保するには有効なわけですね。

人材確保というだけではなくて、今まで以上に頑張ってもらえれば、会社の業績アップにもつながりますよね。

ただ、一方で、人件費がアップするという問題があります。

そこで、助成金の活用です。人件費がアップしても、一定の助成金が出れば、その人件費が補填されることになりますよね。

つまり、人材確保のためには処遇アップしないといけない。ただ単に処遇アップすると、人件費がかさむ。

助成金を利用すれば、人件費のアップをやわらげることができる、という訳です。

これを使わない手はないと思います。

事例スライド

助成金を活用するとどうなるか、具体的にみていきましょう。

ある会社では、パートやアルバイトを、定期的に正社員に転換していくことにしました。

毎年、4月と10月に実施します。

正社員になった人は、処遇があがって、モチベーションがアップしました。仕事をより頑張ってくれるようになりました。

以前は辞める人が多くて離職率が高かったんですが、みんな辞めずに長く勤めてくれるようになりました。

人件費はアップしたんですが、助成金が出るので、一部はカバーすることができています。

従業員のがんばりで会社の業績がアップしているので、ボーナスや昇給にもお金が回せるようになって、よい循環、正のスパイラルが続いています。

このように、助成金を活用して、人に投資して、会社業績を上げていく、ということができるわけですね。

国もこの助成金を拡充していて、2019年度は、1年度で最大20人まで助成金を申請できるようになりました。

1人57万円×20人で、毎年最大1140万円です。この金額の利益を稼ごうと思ったら、結構大変ですよね。

ぜひ、あなたの会社でも、活用を考えてみてはどうでしょうか。

中小企業の範囲

中小企業の範囲スライド

中小企業の範囲について解説します。中小企業かそれ以外か、ということですね。

中小企業かどうか、助成金と何の関係があるのかと思うでしょうが、関係あるんです。

助成金によっては、中小企業のほうが金額が多くなるんですね。

そしてこのコースで出てくる正社員転換の助成金もその1つで、中小企業の方が金額が高くなります。

具体的には、正社員転換1人あたり、中小企業は57万円もらえるんですが、大企業だとそんなにもらえなくて、低くなってしまうんですね。

ですから、大事なことですので、よく理解しておいてください。

さて、中小企業かどうかは、資本金と常用労働者数で判断されます。

資本金というのは、わかりますよね?会社登記してある資本金ですね。

常用労働者数というのは、ちょっとわかりずらいですが、簡単に言うとフルタイムではたらく従業員のことです。役員は含みません。

例えば、社長が1人、正社員が1人、パートが1人の3人の会社だったら、ここでいう常用労働者数は1人になります。

さらにいうと、業種によって、その基準が変わってきます。

小売業の場合は、資本金5,000万円以下か、常用労働者数50人以下であれば、中小企業になります。

資本金と常用雇用者数のどっちかだけ条件をクリアしていればいいので、資本金が5,000万円以下なら、たとえ従業員が1,000人いようが、1万人いようが、中小企業ということになりますね。

逆に、資本金が10億とか100億あっても、従業員が30人とかなら、条件クリアで中小企業になります。

ほかに、サービス業なら、資本金5,000万円以下か、常用労働者数100人以下ですね。

卸売業なら資本金1億円以下か、常用労働者数100人以下です。

小売、サービス、卸売に当てはまらない業種だったら、資本金3億円以下か、常用労働者数300人以下という、一番ゆるい条件になります。

まずは、自分の会社が中小企業に当てはまるかどうか、きちんと確認しておきましょう。

基礎条件

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助成金を申請するための前提条件について解説します。

まず、会社が雇用保険に加入していることですね。この助成金は、国の雇用保険が財源になっていますので、雇用保険加入が前提になります。

次に、帳簿類を整備していること。帳簿類というのは、賃金台帳とか、出勤簿、雇用契約書、就業規則などですね。

この中で、就業規則については、10人以上の会社は、つくって労働基準監督署へ提出するのが義務付けられています。

10人未満の会社は法律上は義務ではないんですけど、助成金を申請する場合は必要になります。

帳簿類については、助成金を申請するときに、労働局に提出することになりますので、もしきちんと整備されていない場合は、この機会にチェックされることをお勧めします。

あとは、常識的な条件になりますが、反社会的勢力との関係がない、性風俗業等ではない、社会保険加入逃れしていない、残業代をきちんと払っている、保険料を滞納していない、労働法令違反していない、ということですね。国からお金をもらうわけですから、この辺は当たり前ですよね。

最後に、従業員を解雇したり、会社都合退職がある場合は、解雇してから一定期間は助成金が申請できなくなります。

この助成金が申請できなくなる期間については、後々また解説します。

この中では帳簿類の整備が一番大変ですかね。

いざ助成金を申請したいとなったときに、困ったことにならないように、労務管理についてきちんと整えておきましょう。

助成金の額

助成金の額スライド

ここでは、助成金の金額について解説します。

さて、待ちに待ったお金の話ですね。

助成金の名前は、キャリアアップ助成金、正社員化コースといいます。

パート・アルバイトなどの有期契約社員を正社員に転換した場合に、57万円の助成金が支給されます。

ちなみにこれは中小企業の額で、大企業の場合は少し下がって、42万7,500円になります。

この助成金の良いところは、1年度に20人まで申請できることですね。

10人だったら、57万円×10=570万円、20人だったらMAX1,140万円ですね。

しかも、これは1事業所の限度額なので、事業所が2箇所あれば、その分上限は増えます。

例えば東京本社と大阪支社があって、それぞれ雇用保険に加入していれば、各20人ずつ、計40人を1年度内に申請することも可能ですね。

あとはですね、生産性要件というものがあって、3年前にくらべて生産性が6%以上アップしていると、57万円が72万円に増額されます。

これは、決算書類の数値から計算して条件を満たしていれば、金額が上がります。

この上乗せは申請してもしなくても良いことになっていて、上乗せ申請する場合は、提出する書類がどんと増えます。

大変なので上乗せ申請しないことも多いです。

とはいえ少なくない金額ですので、助成金を申請するときに、条件を満たしていたら、ぜひ申請してみてください。

対象者

対象者スライド

ここからは、正社員にする従業員の要件について解説します。

要件があるということは、誰でもいいから正社員にすれば助成金がもらえる、ということではないということです。

1番の基本的な要件は、「勤続6カ月以上の有期雇用労働者を、正社員転換する」ということです。

ただし、勤続が長すぎてもダメで、勤続3年以内に限ります。5年10年働いているパートアルバイトの人だと、ダメということになりますね。

これを大前提とするんですが、それ以外に対象外となる場合があります。

まず、正社員にする約束をして入社してきた場合ですね。「最初半年だけ有期雇用ね、半年後に正社員にするから」というのはダメだということです。

また、正社員の求人に応募してきた人を、有期雇用で入社させた場合も対象外です。

どちらも、最初から正社員にするつもりなのに、助成金目当てで最初は有期雇用にしているとみなされてしまうんですね。

次に、過去3年以内に、その会社や関連会社で正社員や役員だった場合です。

これも、正社員や役員を、助成金目当てで有期雇用契約に変えてしまったという風にみなされてしまいますので、対象外です。

また、役員の3親等以内の親族は、身内ということで対象外になります。

そして、定年まで1年ない人の場合は、正社員にしたとしても、すぐ退職してしまうなら意味がないということで対象外です。

それと、助成金申請時までに自己都合以外の理由で退職した場合も対象外です。

助成金を申請したらもう用済みで解雇、なんて会社に、助成金が出たらおかしいですよね。

同様に、正社員に転換して助成金申請したらすぐ、有期雇用に戻す。これも当然対象外です。

以上のように、助成金目当ての会社が悪いことができないように、細かく要件が決められています。

この辺は、悪いことなど考えずにきちんとやっていても、悪い会社への対策として決められている条件にひっかかって助成金がでなくなる場合もあります。

実際には労働局の判断になりますので、どんなにきちんとやっていても、助成金が出ないことがあるという覚悟はしておいたほうが良いと思います。

対象事業主

対象事業主スライド

ここでは、対象事業主について解説します。前の解説では従業員の要件についてでしたが、今回は会社の要件ですね。

まず1つめは、きちんと正社員転換制度を就業規則でルール化して、それにのっとって有期雇用の従業員を正社員にすることですね。

要は、助成金のためだけに、一度きり正社員転換するのではダメということです。今後もずっと、正社員転換のルールを運用していく会社でないといけないということですね。

2つめに、正社員転換したあと6カ月継続雇用して、賃金を5%アップすることです。

正社員転換してすぐ退職するようでは、助成金目当てとみなされてしまうため、6カ月間の継続雇用が条件になっています。

また、名前だけ正社員にしてもダメで、賃金5%以上アップという、実際の処遇改善がされていないと対象になりません。

3つめに、雇用保険、社会保険に適正に加入させていること。まぁ、保険料払いたくなくて法律違反してたら助成金なんて出ないのは当然ですよね。

4つめに、転換6カ月前から転換6カ月後の間、会社都合退職が発生していないこと。

正社員転換して助成金を申請している一方で、従業員のクビを切っていたら、助成金は当然でなくなりますよね。

従業員に良いことをしている会社に助成金が出るという趣旨からして、仕方ないことでしょうね。

5つ目に、助成金申請時に正社員転換制度を廃止していないこと。助成金申請し終わったら、もう正社員転換制度廃止です、と。これは認められませんということです。

以上のように、助成金の趣旨に反して、悪いことができないように、要件が決まっています。

前回お話しした従業員の要件と同じで、今回の会社の要件も、実際は労働局の判断が入ってきます。

労働局の判断によって、助成金が出なくなることもあるということを、覚えておいてください。

申請の流れ

申請の流れスライド

いよいよ、助成金申請の流れについてです。

正社員転換すれば申請できる助成金ですが、手順があります。その手順を守らないと、助成金が出なくなってしまうんですね。

ですので、ここはしっかり理解しておいてくださいね。

この助成金は、事前申請しておいて、要件をみたしたら支給申請、という2段階の手順を守らないといけません。

具体的には、最初にやらなければいけないことは、キャリアアップ計画書というものを、提出することです。

これは、有期雇用契約者を、今後どのように処遇改善していくかということを、会社側と労働者側で決めましたよ、という計画書になります。

このキャリアアップ計画書を提出して、認定を受けないといけません。

その後に正社員転換した人が、助成金の対象になってきます。キャリアアップ計画書を出す前に正社員転換しても、対象になりませんので注意してくださいね。

それから、勤続6カ月以上の有期雇用契約の人を、正社員に転換します。もちろん、就業規則に正社員転換制度を定めておく必要があります。

そして、賃金を5%以上アップして6カ月継続雇用して賃金を支払い終わったら、助成金が申請できるようになります。

注意するのは、条件を満たしてから2カ月以内に支給申請しないと、助成金がもらえなくなります。

申請期限は絶対厳守です。遅れても、言い訳は一切通りませんので、絶対に忘れないようにしてください。

期限ギリギリにならないように、早めに提出するように心がけてくださいね。

それで、支給申請したあとは、審査があります。いまは助成金は非常に人気があって、労働局でも審査待ちがかなり長くなっています。

審査まで半年かかるなんてのがザラですね。

そして審査では、不備があった場合の確認や、追加で書類出してくださいなんて連絡がきます。

無事審査が通ったら、支給決定がされて、指定口座に入金となります。

実際には、正社員転換してから入金までは1年以上かかると思った方がいいですね。

助成金で入るお金をあてにするようなことは難しいと思いますので、忘れた頃にもらえるくらいの意識で良いと思います。

提出物

提出物スライド

具体的に、助成金申請のときの提出物について見ていきましょう。

助成金の申請は、労働局に対して行うのですが、都道府県によって窓口が違います。

所轄のハローワークの場合もありますし、労働局に助成金受付窓口を設けていることもあります。

詳しくは、労働局のホームページなどで確認してみてください。

さて、提出物は、申請書一枚では済みません。いろんな添付書類が必要です。

まず、賃金台帳、出勤簿、雇用契約書、就業規則などの帳簿類のコピーが要ります。

また、それ以外にも会社情報確認のための謄本や、助成金振込先口座も提出します。

それ以外にも、都道府県によって、追加書類を求められることがあります。

初めて助成金を申請するときは、きっと書類の準備が大変に感じると思います。

ただこれも、不正受給を防ぐために労働局が確認のためにしていることなので、我慢するしかありません。

国からお金をもらう立場ですので、その辺を理解して、頑張って準備するようにしてください。

キャリアアップ計画書

支給申請書

支給要件確認申立書

支払方法・受取人住所届